Vol.4

第2巻『京都魔王殿の謎』 リレーノート②
吉村達也



小説は作者の手を離れた瞬間、読者個人個人の感性や人生経験によって、オリジナルの作品に変貌する、というのが、かねてからのぼくの持論です。

同じ小説を10人が読めば、10通りの受け止め方があり、たった1個の作品が10の作品に増殖する。これが小説の(映画もそうです)面白いところです。

本プロジェクトのプロデューサーである梶原さんのリレーノートを読んで、「ああ、なるほど。この作品は純愛という視点から捉えることもできるのか」と、作者としてはじめて気づいた(笑)のも、同じ理屈です。



『京都魔王殿の謎』には、きわだって対照的なふたつの愛が出てきます。

ひとつは相手を真摯に思う愛です。しかし、もうひとつは、きわめて自己中心的で、相手の都合を考えずに、自分ひとりで勝手に爆走する「ゆがんだ愛」です。

しかも強烈なゆがみ方です。

小説の世界だけでなく、現実でも、この手の愛がいちばん危険なんです。

そう思われませんか?



作者は、このゆがんだ一方的な愛のすさまじさをミステリーの主軸に置いて書いたのですが、はからずもそれが、もうひとつのピュアな愛を相対的に浮かび上がらせる効果を生んだのかもしれないな、と、梶原プロデューサーのノートを読んでそう思いました。



本作は、『京都魔界伝説の女』がベースになっていますが、決定的に違うのが、事件を引き起こした心理のすさまじさのレベルです。それによって、旧作を読んだ方も驚く、まったく新しい結末が生まれました。



《事件の真相は 人間の想像を超えていた!》



これが第2巻のオビキャッチですが、旧作を発表した当時といまとでは、現実社会における人心の屈折度は較べものになりません。

その変化を登場人物にも投影したところ、新たなる驚愕の真相が必然的に浮かび上がってきた、というわけです。



旧作の「怨念度」を★★★とすれば、完全に新規で書き直した本作の怨念度は★★★★★といったところでしょうか。

氷室想介が21世紀に再登場した意味を強く感じさせる作品になったのではないかと思います。

京都魔界ツアー⑦

⑦方広寺「国家安康」の鐘


























三十三間堂のすぐ北が京都国立博物館、そしてその北隣にあるのが方広寺。

ここにある大きな梵鐘は「国家安康」の銘が刻まれていることで知られている。それに関するエピソードはつぎのとおり。(11月発売『京都魔王殿の謎』より抜粋)



「秀吉の死後、豊臣政権は崩壊し、徳川家康が天下統一をはたして江戸幕府が開かれたわけですが、それでもなお家康は、豊臣家の逆襲を警戒しつづけておりました。(中略)

そんな家康の不安を察した側近の儒学者・林羅山と禅僧の以心崇伝が画策して、方広寺の梵鐘にとんでもないイチャモンをつけました。(中略)

この梵鐘に刻まれた銘文の中に『国家安康』『君臣豊楽(くんしんほうらく)』という言葉があるのに林羅山らは目をつけ、『国家安康』は家康の『家』と『康』を分断したものであり、『君臣豊楽』は豊臣家の繁栄を祈って、徳川家の凋落を望むものだとして、豊臣家に対して難癖をつけたんですね。

そして、そこからはじまる徳川家対豊臣家の対立が、やがて大坂冬の陣から夏の陣を引き起こし、ついには豊臣家の滅亡となってしまうのです」



上記の写真は15年前の1996年10月に実際に京都で行なわれた魔界ツアーの一場面(カッパノベルス版掲載写真より)。

中央、メガネをかけておられるのが「魔界案内人」と称してこのツアーのガイドをなさった松木さん。そう、「魔界百物語」に登場する魔界案内人・一柳次郎のモデルである。




Vol.03

第2巻『京都魔王殿の謎』 リレーノート①
梶原秀夫(ノアズブックス 出版プロデューサー)



最終校正で、四度目の読み返し。ここでは、一気に読むことを心がけました。

誤字脱字を見つけるのも重要なことですが、物語の中に入り込んで読んでみたのです。一読者の立場になって。

グイグイと物語の面白さに引っ張られていきます。いったい、どんな事件が起こるのか……。

吉村達也氏が仕掛けたトリック、その意外な展開と結末は、間違いなく読者の想像を超えていると思います。これぞまさに、ミステリーの王道です。

加えて、ドラマ性にも注目です。ネタバレにならないと思いますので、結論だけ言うと、このミステリーは素晴らしい純愛の物語に仕上がっているのです。

改めて、吉村達也ミステリー・ワールドの面白さを実感しました。

校正も終わり、印刷に入った第2弾『京都魔王殿の謎』は、14日に取次へ見本を持っていき配本部数が正式決定、18日に取次へ搬入、全国の書店へと配本されます。

首都圏の大型書店では19日、全国的には21日の書店店頭に並びます。楽しみに待っていてください。

発売前に、プロダクション・ノートVol.3を書いたのは、ひと言だけ伝えたかったからです。これは「純愛の物語だ」と。