Vol.16

リレー・ノート⑭ 流氷とカニの食べ放題バスツアー
吉村達也



前回、梶原さんが文章の中でふれた「北海道バスツアー」というのは、二泊三日で北海道の知床へ冬の流氷を見にいくバスツアーでした。

もちろん東京から北海道までは飛行機です。向こうに着いてからはバスでの移動でしたが、これは『知床温泉殺人事件』を書くための取材旅行。

あえて激安バスツアーというものを取材してみようということで梶原さんを誘ったわけですが、いきなり初日に連れていかれた某湖のそばの某温泉旅館の「カニの食べ放題」は印象的でした。

よくもまあ、こんな中身がスカスカのカニばかり集められたな、と(笑)。これならカニの食べ放題つきの激安ツアーが成立するわけだと納得でした。



ところで、ちょっと話が飛びますが、道頓堀の「かに道楽」は、あの動くカニの看板で知られるご当地のシンボルですが、同店には「網元」という「かに道楽の奥座敷」というキャッチフレーズで呼ばれる別ブランドがあり、これは、たとえば焼肉の「叙々苑」と「游玄亭」の関係に相当する、ワングレード上の店でして。

「網元」の方が「うちは『かに道楽』よりワンランク上のカニを使っています」と胸を張っておっしゃるとおり、たしかに「かに道楽」もたいへんおいしいけれど、「網元」は味だけでなく、ホスピタリティも含めて、一段上をいくことは間違いなし。

網元は大阪だけ(心斎橋)に本館と別館がありますが、東京にもできるといいですね。



話が脱線しましたが、北海道某所でのカニ体験は、まさにその正反対をいくもので、これで私も梶原さんも、「カニ食べ放題」には安易に手を出すなという教訓を得たわけです(笑)。

実際、北海道まできたら、安くておいしいカニが市場にいくらでもあるわけで、なにもわざわざスカスカ食べ放題にいくこともなし。



さて、このツアーの目玉である砕氷船「がりんこ号」に乗って流氷の海に繰り出す体験はすばらしいものでした。

暖冬で、年々流氷ツアーもスケールダウンしているそうですが、やがてこれも失われゆく過去の風景になるのかもしれません。