第3巻『幻影城の奇術師』は、良質のエンタテインメント・ミステリー!
梶原秀夫(ノアズブックス 出版プロデューサー)
カタログNO.3の「プロローグ」をお読みになった方は、この意表をつく出だしに驚かれたのではないでしょうか。僕も正直、びっくりしました。
いきなりグランドキャニオンから始まるとは……。しかも、新名所スカイウォークをしっかり取り上げているところは、さすが吉村達也です。
聖橋博士の蘊蓄(うんちく)にも驚かされますが、高所恐怖症の僕でも、またグランドキャニオンに行ってみたいと思いました。
さらに、いいところは大自然のグランドキャニオンのそばにありながら、好対照の人工都市ラスベガスを舞台にもってきているところです。
ラスベガスには一度しか行ったことはありませんが、ギャンブル好きの僕がまったくギャンブルをしないで、ショーばかり見ていたので、同行した家人が驚いたほど。
昼間は宿泊したホテル・ベラージオのプールサイドにあるカバナで過ごし、夜はショー三昧の日々。大好きなマジシャンのランス・バートン、シルクドソレイユの原点とも言うべき「ミステール」、ステージが一瞬のうちに巨大なプールになる「O(オー)」などなど……。もう一度行きたいラスベガスです!
だからというわけではないのですが、今回の主要登場人物がそこで定期公演をしているイリュージョニストという設定には、僕自身、本当に興味をもちました。
このノブ・オダという名前がいい。メジャー感があります。カバーのイラストがその彼というのも驚きを超えて、吉村マジックに思う存分酔いしれました。
今回は、氷室想介最愛の人である川井舞が事件に巻き込まれてしまうのも、見どころというか、読ませどころのひとつになっています。この後、氷室と舞の関係はどうなっていくのか……。
いくつもの謎を散りばめながら、物語が進んでいくと、読み手としては途中で止めることができません。この本の最初の読者として、本文の校正をしていた僕は、まさしくそうでした。
幻影城の奇術師ノブ・オダのイリュージョンを見てみたい!
この作品こそ、エンタテインメント・ミステリーと呼ぶに相応しい!
僕がそう思ったように、読了後、同じ思いを抱く人が多いことでしょう。