『幻影城の奇術師』は映像が浮かぶ小説だ!
梶原秀夫(ノアズブックス 出版プロデューサー)
実は、吉村さんとは映像化を前提に企画書とシノプシスを作ったことが二度あります。
どちらも面白かったのに、実現できなかったのは今思い返しても残念でなりません。タイトルだけでもあげておくと……。
たしか「一度目は練習結婚」と「幸せな家庭」だったように記憶しています。どちらも、ドラマを見たくなるタイトルだと思いませんか。
ところで、主人公がいつまでも歳をとらないシリーズものが大半を占める中、今回の「魔界百物語」シリーズは、主人公が時代とともに生きていきます。
ですから、氷室想介は1月1日の誕生日で48歳になりました。ひとつ歳をとったわけです。
こういう設定の小説シリーズは、チャレンジ精神旺盛な作家・吉村達也ならではのことでしょう。
この試みが画期的であるだけに、映像化が実現すれば面白いのですが……。
主人公の氷室想介に扮する役者が視聴者と同じ時代を生きて、同じように歳を重ねていくのですからね。見たいですよね、そういうドラマを!
いま、ふと気づきました――。
このシリーズは、作者にとっても、関係しているスタッフにとっても、そして読者のみなさんにとっても、時代を共に生きていた証となる本なのですね。
何年かたって読み返したとき、自分史と重ね合わせて、様々な思いが広がっていくに違いありません。