京都の主要観光地は、新幹線・在来線の線路で南北に分けられる京都駅の北側に集中している。
現在の鉄道線路は、九条まであった平安京・東西路の、七条と八条のあいだを走っている。だから古都がらみのビュースポットが駅の北側に集中するのは必然だ。
最高権力者の住まいである内裏(だいり)も、平安京の最北端にあった。
そんなわけで、京都観光といえば、なにかと駅の北側へ目が向きがちだが、南側にも見どころはいろいろある。
その代表的存在が伏見稲荷大社。全国数万の稲荷神社の総本社である。
ここは稲荷山全体が信仰の場所となっており、山頂に向かう参道には、ごらんのとおり朱塗りの鳥居が延々とつづいている。
千本鳥居というが、実際には五千基以上ある。
この朱塗りの中に入ると、なんとも不思議な雰囲気である。
ぼくは四季の中では冬の伏見稲荷が好きだ。最寄り駅から境内に向けて連なる店々の軒先から、スズメを焼いている煙が立ちのぼっているが、それがいちばん似合うのが冬の時期だからかもしれない。
稲荷(いなり)は「稲成り」からきていると言われるように、日本人の主食である稲(=コメ)の豊作を祈願するために秦氏(はたし)がこれを創建したと伝えられる。
したがって稲を食い荒らすスズメは、あわれ焼き鳥のターゲットにされるのであった。スズメにとっては、じつに迷惑な話である。