第2巻『京都魔王殿の謎』 リレーノート③
梶原秀夫(株式会社ノアズブックス出版プロデューサー)
ミステリーの楽しみ方はひとそれぞれでしょうが、大きく分けて2つあると、よく言われます。
ひとつは、自分で真相を推理する楽しみ。
もうひとつは、作者にだまされる楽しみ。
僕はどちらかというと、後者のようです。物語の中に入り込んでいきたい読者タイプだからかもしれません。
この『京都魔王殿の謎』ではまさに、その楽しみを十二分に味わえました。骨太なミステリーは、作者にだまされる快感をもたらしてくれるものなのですね。
さらに、今回の『魔界百物語』シリーズは、ミステリーの醍醐味を思う存分味わえるだけでなく、僕にとっては聖橋博士の博学ぶりも楽しみのひとつです。
第1巻目の「捏造を完全排除した世界史の再構築」「全世界規模での人類史再構築」は、ぜひ読んでみたいと思いました。もちろん、吉村達也さんが書くのでしょうが……。
第2巻目では「どんな宗教にも善の部分と悪の部分があり、どんな人間にも善人の部分と悪人の部分がある」「心の中に善人と悪人がいっしょに住んでいる――それが人間の正体なんだ」と博士に言わせています。
深~い話で、これもさらに詳しく知りたくなってきます。
「人の一生を最後の最後まで幸せにする要素は、たったひとつしかない」と迎奈津実に言う博士。答えは「好奇心」と聞いて、思わず納得したのは僕だけではないでしょう。
ミステリーの王道をいきながら、こうした蘊蓄を楽しめるというのも、吉村達也ならではのことだと思います。
たとえば――
この本を読み終わったとき、京都魔界案内人の一柳次郎に京都魔界ツアーを案内してもらいたい、と思いませんでしたか……。